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2008.01.12

七宝焼きの思ひ出

koukinparts
中学二年生の時のはなし。

美術の時間に七宝焼きを作ることになった。直径3センチくらいの銅板上に綺麗な色の粉末で好きな模様を作り、次の週に先生が焼いてきてくれるのだ。私と机が近所のW君は生真面目だが、クラスではあまり目立たない存在だ。彼は隣の席のM君と同じクラブだ。彼らは週末に一緒に近所の川へ行き、開高健がウイスキーのCMで「幻の魚」と言ってた「イトウ」をつりに行くのが好きだった。そう、彼らはつり部だった。W君はその部長だった。彼は好きなつりを七宝焼きのデザインにすることを思いついた。それは、近くの席の私にも素敵なアイデアだった。裏に安全ピンをつけた七宝焼きが胸元で燦然と輝き、「つり部」の素晴らしいアイコンとなることは間違いなかった。彼は背景を黄色とし、鮮やかな青色でつりのデザインを作り上げた。配色は綺麗で、M君と私はそのセンスを賞賛した。七宝焼きが出来上がるのがとても楽しみだった。次の週、全員の作品が手元に配られた。W君、M君そして私は、W君の作品を自分の作品のように楽しみにしていた。作品が手元に届いた。

綺麗な色だ。上々の出来だ。あれ、何かが違う。W君は漢字一文字で「つり」を表したのだ。そうして私たちは気がついた。W君は「かねへん」と「糸へん」を間違って作ってしまったのだ。「約」と書かれた七宝焼きは、W君の学生服のポケットにしまい困れた。そうして私は彼の七宝焼きを二度と目にすることは無かった。

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